ぐんぎん尾瀬片品発電所
設計:團紀彦建築設計事務所
所在地:群馬県利根郡片品村
用途:小水力発電所
敷地面積:858㎡
延床面積:159㎡
構造:RC造
階数:地上1階、地下1階
竣工:2024年
写真:KOZOTAKAYAMA
この発電所は群馬県利根郡片品村を流れる清流車沢の水を上流の取水口から取水後、管路で下流の発電所まで引き込み、送水した水を用いて発電を行う小水力発電施設である。日本列島はその8割が山間部であり、こうした水源を用いた小水力発電施設は従来の大規模の発電施設とは異なった視点から地域の電力を賄う重要な役割を担いつつある。水力発電施設というとかつての黒四ダムのような大きなダム湖を伴うものを想像しがちであるが、小水力発電施設は自然環境を大々的に改変せずに山間部にひっそりと計画されることが多く、景観を重視する日本の自然環境とクリーンエネルギーを重視した新しい社会環境に適合した発電形式だと言える。車沢はヤマメやイワナなどの川魚が生息している清流であるだけでなく、山菜採りのハイカーたちに愛される美しい自然環境を備えている。清流の水は一旦自然から借り受けるものであり、背後の急斜面の地中に埋設された水管がタービンによる発電に用いられた後は再び放水路から清流に戻される。従来は多くの発電施設やダムがそうであったようにフェンスで囲われて立入禁止区域となっている施設が多かったが、ぐんぎん尾瀬片品発電所は地域に開かれた発電施設として車沢の自然を鑑賞する舞台装置としても構想されている。本体の発電施設は半地下に設定されており、周辺の地形と融合するように周囲の擁壁と本体は一体的にデザインされている。この発電施設はこのようにこうした水のルートと人が散策する道が交差する地点に計画され、発電施設を中心に山菜取りに訪れる観光客の休憩所としての場を提供すると共に、せせらぎの音を聞きながらピックアップキャンプやバーベキューを楽しむことができる場として、また自然と人間の共生のモデルとしてクリーンエネルギーの意義と役割を小中高生に伝える環境教育の場としての役割を担っている。